石像と曼珠沙華

さち

2010年09月30日 23:22

佐久の主人の実家は佐久市とはいえ、外れの山のふもとの田舎です。


佐久インターを降り、車でパラダのスキー場方面に10分、香坂ダム方面に15分ほど行った、

高速の下のあたりに位置する場所です。


香坂ダムに近い、道の脇に石像が建っています。



菩薩のような、穏やかで美しい女像です。




まだできて数年しか経っていませんが、そこには絶えず花が供えてあります。

実はこの像はある女性を称え、崇め、供養のために造られた石像なのです。

何年か前、稲刈りも終わり秋もいよいよ深まりある晴れた日の午後でした。

稲をまとめて焚いていたお母さんとまだ幼い女の子が、

風にあおられ道路の端まで藁が舞い、それを追いかけて道路に駆け寄ろうとしていた時、

そこをたまたま車で通りかかった女性が、火を見つけ、あわてて車を降りて、

煙が紋々と漂う中、火を消し始めました。

車は左車線に止めていましたが、煙は思いがけず大きく、

あたり一面煙の渦になっていました。

そんな時通りかかった一台の車が、女性の姿や車にも気づかずそのまま・・・

煙の中の女性は、後から来た車と自分の車に挟まれてしまったのです。

即死だったそうです。

火を消すために勇敢に消化活動をしていた女性の、その思いや行動を讃え、

この石像は建てられました。


優しく微笑むその表情と、温かなまなざしがこの道の端で佇んでいます。



近くに曼珠沙華の花が静かに揺れていました。
 

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