石像と曼珠沙華
佐久の主人の実家は佐久市とはいえ、外れの山のふもとの田舎です。
佐久インターを降り、車でパラダのスキー場方面に10分、香坂ダム方面に15分ほど行った、
高速の下のあたりに位置する場所です。
香坂ダムに近い、道の脇に石像が建っています。
菩薩のような、穏やかで美しい女像です。
まだできて数年しか経っていませんが、そこには絶えず花が供えてあります。
実はこの像はある女性を称え、崇め、供養のために造られた石像なのです。
何年か前、稲刈りも終わり秋もいよいよ深まりある晴れた日の午後でした。
稲をまとめて焚いていたお母さんとまだ幼い女の子が、
風にあおられ道路の端まで藁が舞い、それを追いかけて道路に駆け寄ろうとしていた時、
そこをたまたま車で通りかかった女性が、火を見つけ、あわてて車を降りて、
煙が紋々と漂う中、火を消し始めました。
車は左車線に止めていましたが、煙は思いがけず大きく、
あたり一面煙の渦になっていました。
そんな時通りかかった一台の車が、女性の姿や車にも気づかずそのまま・・・
煙の中の女性は、後から来た車と自分の車に挟まれてしまったのです。
即死だったそうです。
火を消すために勇敢に消化活動をしていた女性の、その思いや行動を讃え、
この石像は建てられました。
優しく微笑むその表情と、温かなまなざしがこの道の端で佇んでいます。
近くに曼珠沙華の花が静かに揺れていました。
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